【カテゴリ】
1. 【カテゴリ】
財務会計:コーポレート・ファイナンス(最適資本構成とWACC)
2. 【難易度】
上級
3. 【設問】
成長性の高いITサービス企業であるC社は、現在、無負債(自己資本100%)で経営を行っています。C社のCFOは、今後の大規模な設備投資に際し、一部を銀行借入(負債)で調達することで、企業価値をさらに高めることができるのではないかと検討しています。
法人税が存在する現実の市場環境において、企業が適切な範囲内で負債比率を高めた際、WACC(加重平均資本コスト)および企業価値に与える影響として、理論上最も適切な説明は次のうちどれですか。
4. 【選択肢】
ア 負債は自己資本よりもリスクが低く、期待収益率(コスト)が低いため、負債比率を高めるほど自己資本コストも低下し、結果としてWACCは直線的に下がり続ける。
イ 負債の利息は税務上で損金として算入されるため、負債を利用することで「負債の節税効果(タックス・シールド)」を享受でき、無負債時と比較してWACCが低下し、企業価値は向上する。
ウ モディリアーニ=ミラーの第一命題に基づけば、法人税が存在する場合でも、資金調達の方法(負債と自己資本の比率)は企業価値に一切影響を与えないため、WACCに変化はない。
エ 負債比率を高めると財務リスクが増大するため、債権者が求める利子率(負債コスト)が自己資本コストを上回るようになり、いかなる場合でもWACCは上昇し、企業価値は低下する。
5. 【正解】
イ
6. 【詳細解説】
なぜその選択肢が正解なのか:
正解は「イ」です。法人税が存在する世界では、負債の支払利息が費用(損金)として認められるため、その分だけ法人税の支払額が減少します。これを「負債の節税効果(インタレスト・タックス・シールド)」と呼びます。この節税効果により、負債を活用したほうが、企業全体として債権者と株主に分配できるキャッシュフローの総額が増えるため、WACCが低下し、企業価値(Enterprise Value)が向上します。
該当するフレームワークの理論的背景:
WACCは以下の算式で表されます。
$$WACC = \frac{E}{D+E}r_e + \frac{D}{D+E}r_d(1-T)$$
ここで、
$E$:自己資本の時価
$D$:負債の時価
$r_e$:自己資本コスト
$r_d$:負債コスト
$T$:実効税率
です。
負債コスト$r_d$に$(1-T)$を乗じるのは、支払利息に節税効果があるためです。一般的に負債コストは自己資本コストよりも低いため、負債の割合を増やすことで加重平均であるWACCは低下します。
実務における活用のポイントや留意点:
理論上は負債を増やすほど企業価値は高まりますが、実務においては「倒産コスト(財務的窮境コスト)」を考慮する必要があります。過度な負債は倒産リスクを高め、エージェンシー・コストの増大や、格付けの低下による調達金利の上昇を招きます。ストラテジストは、節税効果によるメリットと、財務リスクの増大によるデメリットが均衡する「最適資本構成」を見極めることが求められます。
#注意事項
情報の活用は自己責任で: 本検定で学ぶ戦略フレームワークや知識は、ビジネスの成功を確約するものではありません。実際の経営や業務への適用は、ご自身の判断と責任において行ってください。
ルールそのものが一変する可能性があるため、常に最新の動向を注視してください。自分で情報を調べに行くのも経営ストラテジストのスキルです。向を注視してください。自分で情報を調べに行くのも経営ストラテジストのスキルです。


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