【本日の問題】経営ストラテジスト検定

経営ストラテジスト検定

【カテゴリ】

財務会計(資本構成と企業価値)

【難易度】

上級

【設問】

ある企業が企業価値(Enterprise Value)の最大化を目的として、資本構成(Capital Structure)の最適化を検討しています。法人税が存在する現実の市場環境において、負債比率を段階的に引き上げた場合の影響に関する記述として、最も適切なものは次のうちどれでしょうか。なお、ここでは破綻コストやエージェンシー・コストが無視できない水準になる前の段階を想定するものとします。

【選択肢】

負債比率を高めると財務リスクが増大し、それに伴って株主資本コストが上昇するため、負債の節税効果を考慮しても常にWACC(加重平均資本コスト)は上昇し、企業価値は減少する。

負債利子の支払いは税務上の損金に算入されるため、負債による資金調達には節税効果(タックス・シールド)がある。そのため、負債比率の上昇に伴ってWACCは低下し、企業価値は増加する。

モジリアーニ=ミラー(MM)の第一命題(修正命題前)に基づけば、法人税が存在する場合であっても、資本構成の変化は企業全体のキャッシュフローに影響を与えないため、WACCおよび企業価値は一定である。

負債比率の上昇は、当該企業の資産固有の不確実性を示すアンレバード・ベータ(アセット・ベータ)を低下させる効果があるため、結果として株主資本コストが低下し、WACCは減少する。

【正解】

【詳細解説】

  • なぜその選択肢が正解なのか法人税が存在する条件下では、負債の利息支払いが税務上の費用(損金)として認められるため、その分だけ法人税の支払額が減少します。これを「負債の節税効果(インタレスト・タックス・シールド)」と呼びます。WACCの計算式は次のように表されます。

$$WACC = \frac{E}{D+E}r_e + \frac{D}{D+E}r_d(1-t)$$

ここで $E$ は自己資本の時価、$D$ は負債の時価、$r_e$ は株主資本コスト、$r_d$ は負債コスト、$t$ は実効税率です。負債比率を高めると財務リスク(レバレッジ・リスク)により $r_e$ は上昇しますが、$(1-t)$ の効果によって負債の税後コストが自己資本コストを下回るため、一定の範囲内ではWACCを押し下げる要因となります。WACCが低下すれば、将来キャッシュフローを割り引いた現在価値である企業価値は増加します。

  • 該当するフレームワークの理論的背景本設問は、モジリアーニ=ミラー(MM)の修正命題(法人税考慮ケース)および、それに続く「トレードオフ理論」の理解を問うものです。MMの第一命題(法人税なし)では「資本構成は企業価値に影響を与えない」とされましたが、法人税を考慮した修正命題では「負債が多いほど節税効果により企業価値が高まる」と結論付けられました。実務的には、ここに「倒産コスト(財務的窮境コスト)」を加え、節税効果のメリットと倒産コストのデメリットが均衡する点が「最適資本構成」であると考えるのが一般的です。
  • 実務における活用のポイントや留意点経営ストラテジストとして、デット・キャパシティ(負債収容力)を正確に把握することは極めて重要です。低金利環境下では負債比率を高めることでWACCを抑え、レバレッジ効果を享受することが理論上は有利に働きます。しかし、過度な負債は格付けの低下や資金繰りの硬直化を招き、不況時のレジリエンス(復元力)を損なうリスクがあります。また、近年ではESG投資の観点から、財務的な効率性だけでなく、非財務的なリスク耐性も含めた資本政策が求められています。

注意事項

情報の活用は自己責任で: 本検定で学ぶ戦略フレームワークや知識は、ビジネスの成功を確約するものではありません。実際の経営や業務への適用は、ご自身の判断と責任において行ってください。

ルールそのものが一変する可能性があるため、常に最新の動向を注視してください。自分で情報を調べに行くのも経営ストラテジストのスキルです。の動向を注視してください。自分で情報を調べに行くのも経営ストラテジストのスキルです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました