経営ストラテジスト検定:本日の演習問題
【カテゴリ】 最新の経営戦略(ダイナミック・ケイパビリティ)
【難易度】 中級
【設問】 デビッド・ティース(David J. Teece)が提唱した「ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)」は、急速に変化する不確実な環境において、企業が競争優位を維持するために自己を再構成する能力を指します。
ティースは、この能力を「感知(Sensing)」「捕捉(Seizing)」「変容(Transforming)」という3つの要素に分類しました。以下のビジネスシナリオにおいて、捕捉(Seizing)に該当する行動として最も適切なものはどれでしょうか。
【選択肢】 ア デジタル技術の進展により、従来の対面販売モデルが衰退し、オンラインプラットフォームへの顧客流出が加速している兆候を、市場調査や顧客インタビューを通じていち早く察知した。
イ 既存の成功体験に縛られた組織文化や、旧来の評価制度が新しい事業モデルの妨げになっていると判断し、組織全体の構造改革と意識変革を断行した。
ウ 察知した市場機会を確実なものにするため、必要な投資判断を行い、新しいオンライン事業を立ち上げるための社内リソースの配分や、戦略的な提携の意思決定を行った。
エ 既存の業務プロセスを徹底的に効率化し、サプライチェーンの最適化を図ることで、競合他社よりも低いコストで同等の製品を提供する能力を磨き上げた。
【正解】 ウ
【詳細解説】
- なぜその選択肢が正解なのか ダイナミック・ケイパビリティの3要素において、「捕捉(Seizing)」とは、感知した機会や脅威に対して、適切なタイミングで投資を行い、ビジネスモデルを構築したり、リソースを動員・配分したりする能力を指します。選択肢ウは、具体的な事業立ち上げやリソース配分の意思決定を含んでおり、捕捉の定義に合致しています。
- 該当するフレームワークの理論的背景 ダイナミック・ケイパビリティは、資源ベース論(RBV)が「持続的な競争優位」を説明する一方で、環境変化が激しい状況での「動的な適応」を説明しきれなかった点を補完する理論です。
- 感知(Sensing):機会や脅威を特定する。
- 捕捉(Seizing):機会を捉えて投資し、価値を具現化する。
- 変容(Transforming):持続的な刷新のために、組織の資産や構造を再構成する。 この3つのサイクルが回ることで、企業は環境変化を乗り越えることができます。
- 実務における活用のポイントや留意点 実務上、多くの日本企業は「感知」まではできていても、既存事業とのカニバリズム(共食い)や社内の抵抗を恐れて「捕捉(投資判断)」で足踏みし、結果として「変容」に至らないケースが多く見られます。経営ストラテジストは、単なる分析に留まらず、資源配分を大胆に変更するリーダーシップと、それを支えるガバナンス体制の構築を支援する必要があります。なお、選択肢エは「オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)」に該当し、効率性を追求する能力ですが、これだけでは環境の変化に対応できないのが本理論の要諦です。
注意事項 情報の活用は自己責任で: 本検定で学ぶ戦略フレームワークや知識は、ビジネスの成功を確約するものではありません。実際の経営や業務への適用は、ご自身の判断と責任において行ってください。 ルールそのものが一変する可能性があるため、常に最新の動向を注視してください。自分で情報を調べに行くのも経営ストラテジストのスキルです。



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